シャンパンゴールドの妖精

シャンパンゴールドの妖精

20090325 シャンパンゴールドの妖精.JPGニコール・ジョーダン著/森野そら訳
960円(本体914円)/2009年3月27日発売
原題:TO BED A BEAUTY

『グレイの瞳に花束を』で日本デビューを飾ったニコール・ジョーダンの、『恋愛戦争』トリロジー第2作です。ニューヨークタイムズ・ベストセラーリストにもランクイン。愛人募集中の放蕩貴族アーデン公爵と、学問好きなインテリ令嬢の美女ロズリンが、「愛」に対する考え方の違いから、火花を散らしあいながらも惹かれていく、スピーディーなヒストリカル・ロマンスです。

あらすじ

19世紀ロンドン。貴族の令嬢ロズリンの夢は恋愛結婚だった。男性を魅了する技を研究するため、高級娼婦の仮面舞踏会に潜入。ところが、新しい愛人を探しに来ていたアーデン公爵の目に留まり、愛人になるよう申し込まれてしまう。アーデンから熱いキスをされながらも、きっぱり断るロズリン。

数日後、姉の結婚式で、ロズリンはアーデン公爵と再会する。アーデンは自分が魅了された女性がロズリンだったことに驚きながら、高級娼婦の舞踏会に参加していたことを強く非難する。だが、ロズリンの目的は、隣人であるハヴィランド伯爵と恋に落ちる方法を学ぶことにあった。ロズリンは、どうすれば男性に愛される女になれるのか、教えてほしいとアーデンに求める。

一方、ロズリンに対し突き上げるような欲望を感じながらも、教師役を引き受けるアーデン。かくして、きわどい愛人レッスンが始まった……。

ニコール・ジョーダンの「恋愛戦争」シリーズ一覧

冒頭のご紹介

1

紳士が自己紹介もしないで、まったく見知らぬ相手に
愛人になるよう求めるなんて、驚くべきことだわ。
――ミス・ロズリン・ローリングからファニー・アーウィンへの手紙


一八一七年六月、ロンドン

「恋人としてすばらしいって、もっぱらの噂よ」
 そんな刺激的な言葉を聞いて無視することもできずに、ロズリン・ローリングは気のりしないまま、ごった返す舞踏場の反対側に視線を向けた。そこには、今しがた入場したばかりの、長身でしなやかな体つきをした貴族の男性が立っていた。
 ハンサムで放蕩者めいた雰囲気をただよわせるアーデン公爵を見たのは初めてだった。もっとも、うわさ話はすでに何度となく耳にしていた。裕福な貴族を絵に描いたような男。シャンデリアの光を受けて、金色の髪が琥珀色に輝いている。堂々として優雅な体にまとった黒いドミノ――マントふうの衣装――だけが、仮面舞踏会のために妥協した唯一のしるしだ。
 仮面をつけていないから、美しい顔だちがはっきりと見える。公爵の登場は、明らかに一同から歓迎されていた――ロズリンを除いて。すぐさま、群れなす美女たちから熱い視線を送られている。誰もが、公爵の気を引きたくて必死だ。
「どうして、公爵は恋人としてすばらしいの?」ロズリンは尋ねた。喜ばしくない公爵の登場に失望を感じていたものの、好奇心を刺激されていた。
 友人のファニー・アーウィンが微笑んだ。「愛の技よ。女を泣かせる力があるって言われているわ」
 仮面の陰で眉をつり上げながら、ロズリンは皮肉っぽく唇を突き出した。「どうして女を泣かせる技が、そんなに人気あるのかしら?」
「歓喜のあまり泣くってこと。アーデンは特別なの。えもいわれぬ快感を女にあたえてくれる男だから」
「全然わからないわ」
 答える代わりに、ファニーは歌うような笑い声をたてた。ロンドンで一、二を争う高級娼婦らしい魅力的な笑い声だ。「わからなくていいのよ、あなたは。だって、経験がないんだもの。でもね、愛人の満足を気にかけたり、自分の快楽より愛人の快楽を優先するような男は、めったにいないのよ。そんな男は、とても貴重なの」
 ロズリンは、何かを考えこむように目を伏せた。今夜、ここに来たのは少々経験を積むためだったが、公爵と経験を積む気はまったくなかった。アーデンは、彼女の新しい後見人であるダンヴァーズ伯爵の親友だった。伯爵は、ロズリンの姉であるアラベラと婚約したばかりだ。ロズリンは、公爵に姿を見られたくなかった。悪名高い高級娼婦の舞踏会に出席していることを知られて、スキャンダルを招くわけにはいかない。二週間後に控えている姉の結婚式で、公爵と正式に知りあう予定だったから、今、身元がばれるのはまずかった。
 派手な裏社交界へ大胆な冒険に乗りだしたロズリンを、公爵は非難するに決まっている。アラベラの話では、アーデンは親友の婚約にひどく批判的で、伯爵がこんなに早くローリング家の長女と激しい恋に落ちたことを疑わしい目で見ているという。
今、公爵の姿を目の当たりにしたロズリンは、いかにもシニカルな反応を返しそうな男だと納得できるような気がした。引き締まって彫りの深い顔だちは、驚くほど整っているが、なかなか高慢そうに見える。物腰もまた、彼ほどの貴族ならいかにもありそうな気配を漂わせている――つまり、洗練されて堂々としているが、少々横柄な感じ。けれども、アーデン公爵ほどの富と権力をもつ者なら、傲慢であっても許されるのだろう、とロズリンは思った。
 だが、彼がすばらしい恋人だという噂にはかなり驚いていた。
ロズリンの物思いを破るように、ファニーが率直な感想をつづけた。「個人的には公爵のことを知っているわけじゃないけど、あなたには話しておくわ。彼は一度にひとりしか愛人をもたないの。だから今夜、新しい愛人を探しにやって来たのよ」
「前の愛人はどうしたのかしら?」ロズリンが尋ねた。ファニーから聞けることには何でも興味がわいてくる。
「公爵を独占しようとしたのがいけなかったのね。パトロンを満足させておきたいなら、絶対にやってはいけないことだわ。特に、アーデンほどの貴族にとっては、そういうこと。だって彼なら、女なんてよりどりみどりですもの」
 確かに商品を眺めているみたいだわ。平然と舞踏場を見わたす公爵の様子を見て、ロズリンは思った。ちょうどその時、公爵の視線がロズリンの上に留まった。あからさまな興味のこもった目でじっと見つめている。思わず彼女は一歩後ろへ退いた。突然、どこかに身を隠したくてたまらなくなった。今夜はお忍びでここにやって来たから、顔の上半分を仮面でおおい隠し、淡い金色の髪には、粉をふったかつらとつばの広いボンネットをかぶっている。
 けれども、ロズリンの目立つ装いが公爵の関心を引いてしまったのだろう。ファニーから借りた衣装は、えり元がロズリンの好みよりずっと深くえぐれているとはいえ、そもそも羊飼いの娘の衣装だから、かなり控えめな装いだった。それに比べて、他の女性たちがまとっているのは、ギリシャの女神やローマの奴隷娘やトルコのハーレムの女という想定の衣装が多く、かなり体を露出している。ファニーが身につけているのはクレオパトラの衣装で、エキゾチックな顔だちと漆黒の髪を引き立てていた。
アーデンの視線は依然として離れる気配がなく、ロズリンは胸がドキドキしてきた。かなり距離が離れているというのに、公爵の突き刺すような視線が痛いほど感じられる。
「あの人、わたしのことをじっと見てる」ロズリンがつぶやいた。いらだちと心配で心はいっぱいだ。
「驚くことではないわ」ファニーが楽しそうに言った。「あなたのように優雅で純真な雰囲気をそなえた娘は、こういう場所では新鮮に見えるはずよ。言ってみれば、たくさんのエキゾチックな花を売っている花屋に一本だけ咲いている〝英国のバラ〟という感じかしら」
 ロズリンは、怒った顔で友人をにらんだ。「わたしは売り物じゃないって知ってるくせに」
「でも、公爵は知らないわ。当然アーデンは、あなたが商品として自分を見せつけてサービスを売ろうとしているって思っているわよ」
「でも、わたしはそんなつもりはないもの。あなたたちがお客さん相手にどんなふうにふるまっているか研究しようと思って来ただけだから」
「公爵の関心を引けたのだから喜んでいいわよ」ファニーがいじめるような口調で言った。
「とんでもない。喜んだりしないわよ、ファニー! わたし、心配なんだから。アーデンに正体を知られるわけにはいかないもの。二週間後には教会で顔を合わせる相手なのよ。ここにいたことを、わたしの今の後見人にばらされては困るわ。ヤシの鉢植えでも見つけて隠れなくちゃ。見て……。こっちに来る!」
 さらに一歩退くと、ロズリンは大理石の柱の陰に隠れた。ファニーもいっしょに隠れ、仮面ののぞき穴から笑顔をちらつかせた。
「笑うのはやめてよ、裏切り者」ロズリンがつぶやいた。「今、危険にさらされているのはあなたの評判じゃないから、笑ったりするのよね」
「そうよ。だって、わたしの評判なんて何年も前に捨てちゃったもの」ふいに、ファニーの表情がかすかにかげった。「アーデンに関心なんかなくてよかったわね、ロズリン。彼はすばらしい恋人かもしれないけど、心がない薄情者って言われているのよ。あなたが探しているのは、愛してくれる男性ですものね」
「そのとおりよ」
 ロズリンは恋愛結婚をするつもりだったし、シニカルで放埒な公爵というものは、義務と便宜以外の理由で結婚などしないと相場が決まっていた。
首をわずかに傾けて、柱の陰からのぞき見る。「何てこと! こっちに近づいてくるわ」ロズリンは、背後にある両開きの扉に視線を走らせた。「わたし、ここにいられない。公爵が帰るまでどこか避難できる場所があるかしら?」
「建物の後ろのほうに通路があるわ。その両側にたくさん小部屋が並んでいるの。カップルがふたりきりになれる場所よ。まだ夜も更けていないから、かなり空いていると思うわ。しばらくそこに隠れていたらどうかしら? こういう場でアーデンはいつも長居をしないの。彼が帰ったら、迎えに行くから」
「いい考えだわ」ロズリンはそう言うと、すばやく背を向けた。
「走っちゃだめ」ファニーがアドバイスした。「そんなことをすると、逃げる獲物を追いかけようとする男の本能を刺激してしまうから」
 なんとか足を止めたロズリンは、肩ごしにいたずらっぽい視線を投げかけた。「誰の獲物にもなるつもりなんかないわ。もし公爵に話しかけられたら、ファニー、わたしの居場所をばらさないでよ」

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カーラ・エリオットの
「罪深き集い」3部作

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学問を愛し、知的で気高い侯爵未亡人たちが、危険でろくでもない放蕩者たちの毒牙にかかる!?

第1作:『スキャンダルは恋のはじまり』
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第2作:『今宵、悪魔に身をゆだねて』
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第3作:『伯爵のハートを盗むには』
20110725-伯爵のハートを盗むには.jpg

今後のラインナップ

2012年7月27日

TOUCH ME WITH FIRE

TOUCH ME WITH FIRE.jpg〈NJ傑作コレクション〉の第3弾となるリージェンシー作品です。おばが選んだ相手と無理やり結婚させられそうになったブレーズは、宿に宿泊中、おばから逃げ出すことを決意。メイドに扮装して空室に隠れこむが、そこには、脚を負傷した子爵のジュリアンが長椅子に横たわっていて……

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